春の七草は「七草粥」として一般的によく知られていますが
秋の七草ってあまり聞き慣れませんよね。
どんな由来があってどんな植物が七草なんでしょうか。
そんな秋の七草と春の七草の違いなどをまとめました。
秋の七草と呼ばれる由来
一般的に「秋の七草」と言われている植物は、「山上憶良(やまのうえのおくら)」が万葉集で日本の秋の花を代表するものとして、詠まれた2つの歌が親しまれていったといわれています。
●一首目:「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
意味→「秋の野にとりどりに咲く花を、指をおりながら一つ一つ数えてみると、七種類の花がありました」
●二首目:「萩(はぎ)の花 尾花(おばな)葛(くず)花 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花(おみなへし)また藤袴(ふじばかま)朝貌(あさがお)の花」
万葉集や山上憶良(やまのうえのおくら)って、そういえば学生時代に習ったような記憶が。学生の頃は勉強の一環程度にしか覚えてなくて、すっかりうろ覚えですが、大人になった今ならもっと興味をもって学べそうな気がします。
昔の人は秋の草花が咲いているのを眺めながらゆっくり散策していたんでしょうね。現代は昔と違って環境も変化しているので、ゆっくりと草花を眺める習慣などが少なくなったように感じます。
秋の七草の種類はこちら
❶萩(はぎ)
枝垂れした細い茎に、赤紫の小さな花をたくさんつけます。
お彼岸のお供え物のおはぎの名前の由来になっています。
❷尾花(おばな)= ススキのこと。
お月見のお供えものに欠かせないものです。
花穂が獣の尾に似ていることから、別名尾花と呼ばれています。
❸葛(くず)
つるが伸びて周りの植物を覆ってしまうほどです。
濃紺紫色の花を咲かせます。根の澱粉は葛粉として食されます。
❹瞿麦(なでしこ)
縁が細かく切れ込んでいる主にピンクの可憐な花を咲かせます。
中国から伝来してきたなでしこと、日本原産のなでしこを分けて呼ぶために「大和なでしこ」
と呼ぶようになり、花の可憐さから日本女性を形容する呼び名となりました。
❺女郎花(おみなえし)
初秋に黄色い小さな花を咲かせます。
切り花として販売されています。
❻藤袴(ふじばかま)
小さいピンク色の花がたくさん咲きます。乾燥すると良い香りがするので、古くから香水などに利用されていました。昔は河原などに群生していましたが現在は数が減って準絶滅危惧種に指定されている草花です。渡り蝶の「アサギマダラ」が旅の途中でこの藤袴(ふじばかま)の花の蜜を吸うことで有名です。
❼朝貌(あさがお)= 桔梗(ききょう)のこと。
諸説ありますが、桔梗が最も有力だと言われています。
紫や白の花が咲きます。桔梗は家紋にも取り入れられました。こちらも自然に自生している桔梗は激減しており絶滅危惧種に指定されている草花です。
秋の七草と春の七草とは何が違うのでしょうか?
「春の七草」は無病息災や暴飲暴食などで弱った胃を休めるために七草粥として食べますが、「秋の七草」は 観賞して楽しむ草花ですので目的が違います。
秋の七草とはいっても、七草粥として食べる習慣や行事などもありません。秋の七草は直接食べたりしませんが、漢方薬に利用されていることが多いです。
【七草のそれぞれの効用】
萩(はぎ)・・・めまい、のぼせ、咳止め
ススキ・・・解熱剤、利尿作用
葛(くず)・・・発汗、解熱、鎮痛薬、肩こり、葛根湯の主薬
瞿麦(なでしこ)・・・むくみ、高血圧
女郎花(おみなえし)・・・利尿作用、解毒、はれもの
藤袴(ふじばかま)・・・糖尿病の予防と治療、かゆみ
桔梗(ききょう)・・・たんを伴う咳、膿の排出
あとがき
昔はたくさん秋の草花が咲いていたのでしょうね。その草花を眺めながら歌を詠む情景が目に浮かぶようです。でも絶滅してしまう草花があるなんてとても悲しいですね。現代は忙しい毎日ですが、たまには四季の移ろいや風情をのんびり楽しんでみませんか?